対物賠償保険の規定は、対人賠償保険の内容と重複する点が多数ありますので、「自動車保険の対人賠償保険について」の記事も参照してください。
被保険者の範囲
自動車保険における対人賠償保険の被保険者となるのは次の者です。
1. 記名被保険者
保険証券に記載された被保険者のことです。
個人所有の自動車の場合は主として運転をする人が、法人所有の自動車ではその法人が記名被保険者となるのが一般的です。
記名被保険者は、被保険自動車の使用を他人に承諾する権限持つことから、所有者または所有者と実質的に同等に考えられる者である必要があります。
2. 被保険自動車を使用もしくは管理する者
以下の者が該当します。
- 記名被保険者の配偶者
- 記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
- 記名被保険者またはその配偶者で別居している未婚の子
ここでいう「親族」は六親等内の血族、配偶者、三親等内の血族を指します。
3. 許諾被保険者
記名被保険者の承諾を得て被保険自動車を使用または管理中の者を指します。
- 自動車修理業。駐車場業、給油業、洗車業、自動車販売業、陸送業、運転代行業など自動車を取り扱うことを業とする者が、業務として自動車を預かり使用・管理している場合は許諾被保険者にはなりません。
- 「承諾」は、記名被保険者の直接の承諾が必要ですが、第三者が使用することを知りながら、明示の反対をしなかった場合も、直接承諾を与えたものとして取り扱われます。なお、「また借り」の場合、その借り主は、被保険者になりません。
4. 記名被保険者の使用者(雇い主)
記名被保険者が業務に使う目的で被保険自動車を自身が雇用する使用者に使用させている状況に限り、その使用者は被保険者となります。
保険金が支払われる場合
対物賠償保険は被保険者が、被保険自動車の所有・使用または管理に起因して他人の車などの財物に損害を与えた場合に負担する法律上の損害賠償に対し支払われます。
なお、対物賠償保険金は次の3つの条件すべてに適合する場合のみ支払われます。
1. 被保険自動車の所有・使用・管理に起因していること
2. 他人の財物を滅失・破損・汚損すること
単にその物の損害のみならず、壊した結果として生じた間接的な損害(車両が使用できなくなり、代わりの車を使うことで生じる損害である代車損害、営業車が使用できないことにより本来稼働していれば得られたであろう利益の損害である休車損害、商店等の営業損失等)にも支払われる場合があります。
3. 法律上の損害賠償責任を負担すること
法律に基づき相手に弁済する義務を負った場合のことです。
保険金が支払われない場合
1. 対人・対物賠償に共通の免責
以下のいずれかに該当する自由を原因とする損害に対しては、保険金の支払いは行われません。
- 保険契約者、被保険者の故意による事故
- 戦争、内乱、騒動など
- 地震、噴火、またはそれらに伴って発生した津波
- 台風、洪水、高潮
- 核燃料物質等による事故、放射線照射、放射能汚染
- 被保険自動車の競技・曲技等
保険契約者・被保険者の重大な過失・法令違反・被保険者の無資格運転および麻薬等の影響を受けた運転については被害者保護の観点から支払いの対象となります。
2. 対物賠償固有の免責
次のいずれかに該当する者が所有・使用・管理する財物が滅失・破損・汚損された場合、そのことによって被保険者に損害責任が生じても保険支払いは免責されます。
- 記名被保険者
- 被保険自動車を運転中の者またはその父母・配偶者・子
- 兄弟姉妹が対象の場合は免責されません。
- 保険会社によっては「被保険自動車を運転中の者またはその配偶者と同居している者」に限定される場合があります。
【例】保険金が支払われる場合(○)支払われない場合(×)
- 運転中誤って崖から転落し、友人から借りたカメラを壊した=×
→上記の「管理する財物」に該当するとされるため、免責されます。 - 運転中誤って叔父の所有する自動車に衝突、破損させた=○
- 商品配送中、得意先の店に衝突しショーケースを破損させた=○
- 酒気帯び運転で道路に駐車中の自動車に衝突し破損させた=○
示談交渉サービス
対物賠償の示談交渉サービスの概要は、対人賠償とほぼ同様です。
損害賠償請求権者(被害者)の直接請求権
対物賠償の損害賠償請求権者の直接請求権の概要は対人賠償の場合とほぼ同じです。ただし、保険会社は被害者に直接支払いできる条件に一部違いがあります。
- 判決、または裁判上の和解・調停によって、被保険者の損害賠償責任の負担額が確定した場合
- 被保険者が負担すべき損害賠償責任の額について、被保険者と被害者の間で書面による合意が成立した場合
- 被害者が、被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対し書面で承諾した場合
- すべての被保険者またはその法定相続人について、破産・生死不明の事由があった場合、またはすべての被保険者が死亡かつ法定相続人がいない場合
対人賠償請求権者に対し直接支払いできる条件のうち、dの項目は対人賠償が自賠責保険の上乗せという扱いである場合に生じるもののため、対物賠償においてはそれに該当する状況が発生することはありません。
被害者の直接請求と被保険者の保険請求が競合した場合に、被害者の請求を優先することも対人賠償と同様です。
支払い保険金の計算の概要
1. 支払保険金
1回の対物事故で支払われる保険金の額は、次のように算定されます。ただし、支払保険金は保険金額を限度とします。
対物賠償保険金=(a.被保険者が負担する法律上の損害賠償責任額)+
(b.損害防止費用等)-(c.代位取得の額)-(d.免責金額)
- 被保険者が負担する法律上の損害賠償責任額
-
対物賠償における法律上の損害賠償負担額には、被害財物の交換価格・修理費休車損害などが含まれます。
損害賠償責任額はあらかじめ保険会社の承認を得なければ承認できません。
損害賠償責任額は次のとおり算定されます。損害賠償責任額=相手方の損害額×被保険者の過失割合
- 損害防止費用等
-
対人賠償の場合とほぼ同内容です。
- 代位取得の額
- 「代位取得」とは、被保険者が損害賠償請求権者に対して損害賠償金を支払うことにより取得される権利を指します。
代位取得された権利がある場合はその価額が支払保険金から減算されます。
- 免責金額
- 保険証券に免責金額の記載がある場合には、その免責金額が減算されます。
2. 損害賠償請求権者(被害者)の先取特権
対人賠償保険と同じ扱いになります。
対物超過修理費用補償特約(蒼て自動車全損時超過修理費用補償特約)の概要
対物事故において、相手自動車が古い車で時価額が低い場合など、相手自動車の修理費が時価額を上回る場合があります。しかし時価額を超える修理費については法律上の損害賠償責任が発生しないため、対物賠償保険では保険金支払の対象になりません。
対物超過修理費用補償特約はこの時価額を超えた修理費に対して所定の金額(50万円など)を限度として保険金が支払われるものです。特約の名称、補償内容、取扱方法は保険会社によって異なる場合があります。
ガードレールを壊してしまったり、車庫にキズをつけてしまったり、これらは対物賠償の対象になることが多いですが、比較的金額の低い賠償金額です。
しかし、だからといって設定する保険金額を低くするのは危険です。例えば店舗を壊してしまった、被害者の事業を継続できなくなるような被害を出してしまった際には、休業損害も対物賠償の対象になります。
保険料に大きな差が出る部分ではないので対人賠償と併せて対物賠償も無制限で加入することをおすすめします。
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